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中小企業経営者への法務実務アドバイス(第79回)

〜「係長に残業手当を支払うようになったのですね
…私にもいただけますか?!」〜


事例概要
社会保険労務士からのアドバイス 税理士からのアドバイス
弁護士からのアドバイス FPからのアドバイス


税理士からのアドバイス
まず、法人が残業手当を給与の定期支給時に支払っている場合には、その支給額は、法人においては給与(損金算入)・個人においては給与所得としてその都度源泉徴収されていますので税務上特に留意する点はありません。
ただし、本件のように、既に退職した社員に対し、過去の残業手当を支給する場合は、その性格により課税上の扱いが変わってくることが考えられます。
文字通り、残業手当の後払いであれば原則通り法人側も給与・個人も給与所得となるでしょうが、状況によっては、退職金の上乗せとしての支払で法人側は退職金・個人側は退職所得、また、慰謝料や損害賠償金となるのであれば、法人側は雑損失・個人は一時所得または、非課税所得になることもあるでしょう。
いずれにせよ、法人・個人ともその課税上の性格に沿った課税手続き(修正申告・年末調整の再計算等)が発生する可能性があります。
本件は残業がテーマでしたが、ご参考までに残業時の食事代について説明します。
基本的には、法人が個人に給与や手当てとして実際に支給する金銭のみならず、社宅や食事の提供といった物、または権利その他の経済的な利益を含めて所得税法上給与所得とされます。これらの経済的利益を現物給与といい、金銭支給される給与の代替または、追加支給的性格から原則給与所得として課税されますが、選択性や換金性に乏しいこと、福利厚生的性格も有することから、金額が僅少なもの、社会通念上相当と認められるものについてはあえて課税の対象とせず「非課税」として取り扱われることがあります。
一例を挙げると次の通りです。
(1)職務の性質上又は業務の遂行上必要とされるもの
・ 制服その他の身回り品の支給
・ 研修費用
(2)個人に対する利益の帰属や程度が不明確なもの
・ 会社加入の生命保険、損害保険
・ レジャークラブ、社交団体の入会金等
(3)少額不追求の観点から課税除外とされるもの
・ 永年勤続者の記念品、創業記念品等
・ 社員に対する値引き販売
・ 各種レクリェーション費用
・ 昼食代の補助
(4)政策的措置によるもの
・ 住宅取得資金の貸付
残業時の食事代もこの現物給与の一種で、残業または、宿日直をした人(その人の通常の勤務時間ではなく、時間外における勤務としてこれらの勤務をした人に限ります。)に支給する食事については、課税の対象としなくて差し支えないものとして取り扱われています。
ただし、現物に代えて残業している者に支給する金銭については、食事そのものではなく金銭で支給する手当の一種ですから、非課税の取り扱いは適用されず、その全額について給与所得として源泉徴収の対象にする必要があります。(深夜勤務者等については特例があります。)参考:所基通36-24(残業又は宿日直をした者に支給する食事)
もちろん、「非課税」としての取り扱いは、残業時には食事代を支給する慣行のあること、残業または、宿日直をした人には一律支給すること、福利厚生規定等の社内規定があること等が前提になります。残業手当についても遡及支給は課税上様々な問題点があることについては前述の通りです。
J社は本件を踏まえ、税務上の観点からも、適正な人事・給与制度の構築、労働時間管理、福利厚生規定を整備することがまずは必要と考えます。
なお、事実関係によっては適用要件が異なり、結論が異なることもあります。実際の適用にあたっては、必ず専門家に確認のうえ対応願います。


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